逓信省型式試験合格受信機

第31号 ナショナル国民型スーパー 5S-12型 5球スーパー 松下電器産業(株)無線製造所 (1948.6.12合格) \6,350 

  

  
  ダイヤル:進駐軍放送のコールが記載されている。

  
  シャーシ裏側とユニークな形のIFT、シールドケースがないため、片方をシャーシの下に収めている。

TUBES: 6A7-6D6-75-6ZP1-12F (Prototype), 6WC5-6D6-6ZDH3A-6ZP1-12F (Production Model)
 Permanent Dynamic Speaker (National Model NPD65, 6.5")

ナショナルが「国民型スーパー」と銘打って普及品を目指した小型の5球スーパー。
ダイヤルメカに国民型受信機のものを流用し、国民型に近いサイズの簡素なデザインのキャビネットに納めている。
回路構成は雑誌に発表された段階では6A7-6D6-75-6ZP1-12Fであり、6WC5、6ZDH3の量産を待って切り替える予定となっている。
量産時には6WC5-6D6-6ZDH3A-6ZP1-12Fという普通の普及型スーパーの構成となり、6.5インチの自社製NPD65型パーマネント・ダイナミックを駆動する。
6ZDH3は75の2極部を1個としたもので、省略されたピンは互換性を考慮して空きピンとなっていた。
6ZDH3Aは、本来12ZDH3Aのみ適用とされていたシングルエンドの接続を、一部のメーカが6.3Vで製造してしまった、いわば「標準外」の品種だったが、使いやすかったために市場の要求が高まり、標準品種となったものである。
あまり使われなかった75との互換性を考慮する必要はなかったということであろう。
このセットでは、真空管配置図が6ZDH3Aとなっており、当初から採用されていたことがわかる。かなり早い採用例である。

 コストダウンのためにIFTのシールドケースが省略され、1段目を複同調、2段目を単同調として、2段目はシャーシの下に取り付けられている。
戦後すぐには1万円近くした中波スーパー受信機は、この頃には7千円くらいの普及型の製品が出回るようになってきた。
これには、パーマネント・ダイナミック・スピーカの普及により6ZP1-12Fで十分な出力の回路ができるようになったことも貢献している。
パワートランスも単巻とすることで簡略化している。

 このセットは、コストダウンのためにIFTにかなり無理な構造を採用し、国民型受信機との共通化を図ることで\6,350という価格を実現したが、他の中堅メーカの製品では、ごく普通の構造をとりながら5千円台の製品もあり、競争力があるとはいえない。
この価格はマグネチックを使った国民型2号受信機の2倍程度の価格であり、庶民にとって安価とはいえない。
民放開局前で、スーパーの必然性がない地域も多かった。
この価格で、国民型受信機を思わせる簡素なデザインのスーパーは成功しなかったようである。
このセットは48年12月には通常の部品を使った2代目国民型スーパー5S-15型にモデルチェンジした。

本機は、真空管が失われていたため、同時代のものを取り付けた。

掲載誌、電波科学1948.7、電波日本 Vol.45, No.3

(所蔵No.11680)

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