ラジオの公定価格(昭和18年)
Official Price of Radio (1943)


目次

解説
ラジオ受信機の最高販売価格指定
ラジオ受信機用キャビネットの最高販売価格指定 
ラジオ受信機用部分品の最高販売価格指定 
放送受信用真空管の最高販売価格指定 

参考文献

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解説

戦争の激化により民需用ラジオ向けの資材の供給事情が悪化し、統制が強化された。
本格的な統制が行われたのは昭和15年以降だが、その前(昭和13年)から業界団体であるラジオ工業組合によるラジオ用品規格統一委員会が部品の統一規格を検討し、統一委員会は14年9月、資材に関する連絡調整も行うラジオ用品委員会と改称された。
これによりラジオ用部品は局型用の部品を基本とした物に統一された。
 昭和15年(1940)12月6日の商工省告示によりラジオの種類が11種に規格化され、公定価格が定められた。
昭和16(1941)年7月にはラジオキャビネット、昭和18(1943)年5月1日ににラジオ用真空管、同年6月4日にラジオ用部品の公定価格が指定された。

以下のデータは昭和18(1943)年の「現行公定価格総覧」に記載された商工省告示について読みやすく書き直し、解説を加えたものである。
参照した原本は、法令専門の大手出版社である第一法規出版の正式のものだが、この資料には時代を反映してか、誤植や不鮮明な印刷が目立つ。
本稿では明白な原本の誤りは修正して掲載した。

例に示した受信機は、できるだけ年代の合うものを示したが、この価格が適用される年代以外のものも含まれる。

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ラジオ受信機の最高販売価格指定

昭和18年(1943)6月4日商工省告示第488号、(昭和15年12月商工省告示第799号を改正)

種別 使用真空管 級別 製造業者
最高価格
卸売業者
最高価格
小売業者
最高価格
備考
3球マグネチック 57-12A-12F 1級品
2級品
27.40
24.800
28.80
26.10
33.70
30.50
再生検波
弱電界級
ナナオラ30(B)
アリアR8/J3号
4球マグネチック 57-56-12A-12F 1級品
2級品
42.00
37.80
44.20
39.80
51.80
46.40
並四
弱電界級

シャープ標準10号
4球ペントード
マグネチック
58-57-47B-12F 1級品
2級品
63.00
56.70
66.30
59.70
77.70
69.95
高1
微電界級

シャープ標準20号
4球ダイナミック 58-57-47B-12F 1級品
2級品
80.55
72.50
84.85
76.35
99.40
89.45
高1
微電界級

キャラバンMD-8
4球電池式
マグネチック
32-30-30-33 1級品
2級品
39.25
35.45
41.30
37.30
48.35
43.65
高1
微電界級

オーダ報国D-30号
5球マグネチック 58-57-56-12A-12F 1級品
2級品
47.25
42.65
49.70
44.85
58.25
52.55
高1
微電界級

ナショナルR-5M
5球ダイナミック 58-58-57-2A5-80 1級品
2級品
125.40
112.85
132.05
118.80
154.70
139.25
高2
極微電界級

ビクター5R-25型
5球スーパー
小型ダイナミック
2A7-58-57-47B-12F 1級品
2級品
78.00
70.30
82.10
74.00
96.20
86.70
極微電界級
ウェーヴ愛国号
5球オートトランス
ダイナミック
12YV1-12YV1-12YR1-
12ZP1-24ZK2
1級品
2級品
83.90
75.65
88.30
79.65
103.50
93.35
高2
微電界級

ビクター5A-10型
5球電池式
スーパー
マグネチック
167-1A6-167-167-169 1級品
2級品
80.65
72.60
84.95
76.45
99.55
89.55
非常用受信機
(電池無し)
極微電界級

ナショナル国民150号
6球交直両用
マグネチック
32-30-56-30-33-12F 1級品
2級品
61.45
55.45
64.65
58.35
75.75
68.35
(電池無し)
微電界級
オーダ報国D-100号
6球スーパー
ダイナミック
58-2A7-58-2A6-2A5-80 1級品 182.75 192.45 225.50 極微電界級
ナショナル6S-10
放送局型11号 57-47B-12F 1級品 43.20 45.50 53.30 中電界級
放送局型122号 12YR1-12ZP1-24ZK2 1級品 39.00 41.10 48.30 レス
弱電界級
放送局型123号 V1-R1-P1-K2 1級品 62.40 65.70 77.00 レス
微電界級

1. この中で1級品とは次のメーカーの製品の事である。

ブランド 製造会社名 ブランド 製造会社 ブランド 製造会社
ビクター 日本音響(株) ニッチク/コロンビア 日蓄工業(株) クラウン 日本精器(株)
エルマン 大洋無線電機(株) アリア ミタカ電機(株) ナナオラ 七欧無線電気
テレビアン 山中電機 ウェーヴ 石川無線電機 メロデー 青電社
オーダ 白山無線電機 キャラバン 原口無線電機 ナショナル 松下無線
シャープ 早川電機工業 ヘルメス 大阪無線 コンサートン 利根無線
フタバ 双葉電機 精華 八欧無線電機製作所 ローヤル 原口無線工業
ビオン 瀧澤無線電機工業

(注)1943年、白山無線電機は瀧澤無線電機工業を合併し、帝国電波(株)(現クラリオン)となる。

公定価格の規格品にはのようなラベルが貼られた(クラウン受信機、日本ラヂオ工業組合連合会の例)。

   これ以外のメーカーの製品が2級品になる。
  局型に2級品の項目がないのは局型受信機の製造許可が1級レベルの規模と設備を持ったメーカーに与えられたためである。
  ただし、酒の等級と同じで必ずしも2級の質が悪いという事ではなく、通信機、高級品専門の小規模なメーカーは2級ということになってしまう。

2. 製品価格には電源コードおよびプラグを含む。

3. 1級メーカにしか認可されなかった局型受信機および高い技術が必要な6球スーパーには2級の設定は無い。
  6球スーパー受信機は放送協会認定品の価格とされた。
  1938年頃から、本来は安価な受信機を対象とした認定が、高級なスーパー受信機にも与えられるている。
  高級ラジオを公用に使うことが増え、協会認定が要求されるようになったためと思われるが、この制度により協会認定が必須となったのである。

4.  この公定価格は、これより高い真空管を使っても公定価格を越える価格設定は許されなかった。
  従って規格品より贅沢なラジオは作っても無駄という事になる。
  また、この表にある真空管より安いものを使ったときは公定価格から控除された。
  このため、この一覧にない低コストの旧型真空管(26B,27Aなど)を使ったラジオが「規格外受信機」などと称して規格品の価格から真空管の差額を差し引いた公定価格で販売されていた。
  真空管の品種削減という方針に反するためか、このような規格外受信機の価格について「自粛価格」と呼んでいる販売業者があった。

5. 10ヶ月以上の月賦販売の場合は小売価格に1割5分上乗せすることが認められた。

6. 製造業者が小売業者に直接販売するときは製造業者価格(最高価格、以下同じ)、
  卸売業者が消費者に直接販売するときは小売価格を適用することになっていた。

7. 製造業者の出張販売所が卸売業者に直接販売するときは製造業者価格、
  小売業者に直接販売するときは卸売価格、卸売業者が消費者に直接販売するときは小売価格を適用することになっていた。

8. 製造業者価格および卸売価格には包装荷造費を含み、買主店先渡し価格とする。ただし、外地向けの場合は売主の最寄寄港船積渡価格とされていた。

9. 小売価格は売主店先渡し価格とされていた。

10. 本表価格は物品税を含む

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ラジオ受信機用キャビネットの最高販売価格指定

昭和18年(1943)6月4日商工省告示第489号(昭和16年7月商工省告示第638号を改正)

 セットに遅れてキャビネットの規定が作られた。この規定により、キャビネットの最低寸法が指定された。
このことにより、規格から外れる極端に小型のラジオや、樹脂製キャビネット、携帯型などの変わった形のものは作れなくなった。

公定価格の規格品にはのようなラベルが貼られた(東京ラヂオキャビネット工業組合の例)。

用途 型別 高さ
(mm)

(mm)

(mm)
製造業者
最高価格
卸売業者
最高価格
小売業者
最高価格
放送局型11号用 角型 240 142 398 4.85 5.25 6.05
放送局型122号用 角型 240 142 400 4.10 4.40 5.10
放送局型123号用 角型
角丸型
240 190 400 6.00 6.45 7.45
3球マグネチック用 角型
角丸型
230以上 140以上 352以上 3.65 3.90 4.55
4球マグネチック用 角型
角丸型
233以上 136以上 382以上 4.85 5.25 6.05
4球ペントード
マグネチック用
角型
角丸型
236以上 191以上 388以上 6.35 6.85 7.95
4球ダイナミック用 角型
角丸型
233以上 188以上 418以上 7.10 7.85 9.05
4球電池式
マグネチック用
角型
角丸型
227以上 164以上 397以上 4.55 4.90 5.70
5球マグネチック用 角型
角丸型
246以上 200以上 382以上 5.20 5.60 6.50
5球ダイナミック用 角型
角丸型
245以上 206以上 41以上 9.80 10.55 12.20
5球スーパー
小型ダイナミック用
角型
角丸型
261以上 215以上 397以上 6.25 6.60 7.45
5球オートトランス
ダイナミック用
角型
角丸型
270以上 230以上 442以上 7.15 7.70 8.90
5球電池式
スーパー
マグネチック用
角型
角丸型
245以上 176以上 418以上 6.50 7.00 8.10
6球交直両用
マグネチック用
角型
角丸型
303以上 246以上 503以上 6.50 7.00 8.10
6球スーパー
ダイナミック用
角型
角丸型
273以上 212以上 464以上 20.80 22.40 25.90

1. この価格は合板および雑木材製でニスまたはラッカー塗りのものとする。

2. 製造業者価格および卸売業者価格は包装荷造り費を含み、売主所在地町村内における買主に販売する場合は買主の店先渡し価格とし、その他の場合は売主の最寄り駅譲渡価格とする。ただし、外地向けの場合は売主の最寄寄港船積渡価格とされていた。

3. 小売価格は売主店先価格とする。

4. この価格は物品税込価格とする。物品税法により免税となるものについては、表の価格より物品税に相当する金額を控除することができた。

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ラジオ受信機用部分品の最高販売価格指定

昭和18年(1943)6月4日商工省告示第490号

 ラジオセット、真空管、キャビネットに続いてその他ラジオ部品の公定価格が定められた。
膨大なものになるのですべて紹介することはしないが、項目は次のとおりである。

電源変圧器、低周波変圧器、低周波塞流線輪、中間周波変成器、ダイナミック高声器、マグネチック高声器、
可変蓄電器、可変空気蓄電器、角型紙蓄電器、筒型紙蓄電器、固定雲母蓄電器、半固定蓄電器
可変抵抗器、固定抵抗、高周波同調線輪、高周波塞流線輪、同調ダイヤル、マグネチック高声器用線輪、受話器(両耳型)
電源スイッチ、真空管受口、ヒューズ筒保持器、真空管用遮蔽缶、チップジャック、スプリング端子、ツマミ

 戦争末期のため、敵性語排除が行き届いてきていることがわかる。これだけの部品の価格を決めるためには規格が無ければとても不可能である。
部品の規格化や試験方法が規定されたということは統制の効果といって良いだろう。
ここに示された公定価格は、日本放送協会の定めた規格に該当するものとされた。これ以外のものは公定価格を5割下げるものとされた。
興味深いのは、それまで適当に決められていた「特品」「並品」という部品のグレードが公式に定義されたことである。
定義は次のとおりである。

可変抵抗器:定格電力0.7W以上で抵抗値偏差5%以内のもの(密閉型は0.5W以上)を特品、その他は並品
固定抵抗器:抵抗値偏差5%以内のものを特品、その他は並品
真空管受口特品:上板厚1mm以上、下板厚1.2mm以上の防湿良質合成樹脂製、接触片厚0.25mm以上の銅または銅合金
同      並品:上板厚0.5mm以上、下板厚1mm以上の合成樹脂製、接触片厚0.25mm以上の銅、銅合金、または鍍金鉄板

こうして優秀品と粗悪品?がきちんと定義されたのである。特品は並品の約2倍の価格がつけられている。
その他価格の適用の仕方や物品税の処理についてはキャビネットの項と同じ。

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放送受信用真空管の最高販売価格指定

昭和18年(1943)5月1日商工省告示第390号

種別 型別 製造業者
最高価格
卸売業者
最高価格
小売業者
最高価格
UX-12A 一級品
二級品
三級品
1.340
1.075
0.670
1.435
1.155
0.720
1.78
1.43
0.89
KX-12F(B) 一級品
二級品
三級品
1.190
0.950
0.535
1.280
1.025
0.575
1.58
1.26
0.71
UY-24B 一級品
二級品
三級品
2.185
1.750
1.090
2.355
1.885
1.175
2.91
2.33
1.45
UX-26B 一級品
二級品
三級品
1.340
1.075
0.670
1.445
1.155
0.720
1.78
1.43
0.89
UX-30 一級品
二級品
三級品
1.795
1.435
0.895
1.935
1.545
0.965
2.39
1.91
1.19
UX-32 一級品
二級品
三級品
3.355
2.685
1.685
3.615
2.890
1.815
4.46
3.57
2.24
UY-33 一級品
二級品
三級品
2.600
2.080
1.300
2.80
2.24
140
3.46
2.77
173
UX-45 一級品
二級品
三級品
3.055
2.445
1.530
3.290
2.635
1.645
4.07
3.25
2.03
UY-46 一級品
二級品
三級品
4.005
3.205
2.000
4.315
3.450
2.155
5.33
4.26
2.66
UY-47 一級品
二級品
三級品
3.790
3.030
1.890
4.080
3.265
2.035
5.04
4.03
2.51
UY-47B 一級品
二級品
三級品
2.385
1.910
1.190
2.670
2.055
1.280
3.30
2.54
1.58

UY-56(A)
一級品
二級品
三級品
2.165
1.730
1.080
2.330
1.865
1.165
2.88
2.30
1.44
UZ-57(A) 一級品
二級品
三級品
3.030
2.425
1.515
3.265
2.610
1.630
4.03
3.22
2.01
UY-57S 一級品
二級品
三級品
3.030
2.425
1.515
3.265
2.610
1.630
4.03
3.22
2.01
UZ-58(A) 一級品
二級品
三級品
3.140
2.510
1.565
3.380
2.705
1.685
4.27
3.34
2.09
KX-80 一級品
二級品
三級品
2.380
1.905
1.190
2.565
2.050
1.280
3.17
2.53
1.58
KX-80B 一級品
二級品
三級品
1.880
1.500
0.935
2.025
1.615
1.010
2.50
1.99
1.24
UX-167 一級品
二級品
三級品
3.465
2.770
1.730
3.730
2.985
1.865
4.61
3.69
2.30
UY-169 一級品
二級品
三級品
2.925
2.340
1.465
3.150
2.520
1.575
3.90
3.11
1.95
UZ-1A6 一級品
二級品
三級品
6.500
5.200
3.250
7.000
5.600
3.500
8.65
6.92
4.32
UZ-2A5 一級品
二級品
三級品
3.795
3.035
1.900
4.085
3.270
2.045
5.05
4.04
2.53
UZ-2A6 一級品
二級品
三級品
4.550
3.640
2.275
4.900
3.920
2.450
6.05
4.84
3.03
Ut-2A7 一級品
二級品
三級品
5.680
4.545
2.840
6.115
4.895
3.100
7.56
6.05
3.88
Ut-2B7 一級品
二級品
三級品
5.735
4.590
2.865
6.175
4.945
2.130
7.63
6.10
3.87
KX-5Z3 一級品
二級品
三級品
4.770
3.815
2.385
5.135
4.110
2.570
6.35
5.08
3.17
12Y-H1 一級品
二級品
三級品
2.145
1.715
1.075
2.310
1.845
1.155
2.86
2.28
1.43
6X-K1 一級品
二級品
三級品
1.415
1.140
0.710
1.525
1.225
0.765
1.88
1.66
0.94
12X-K1 一級品
二級品
三級品
2.600
2.080
1.300
2.800
2.240
1.400
3.46
2.77
1.73
24Z-K2 一級品
二級品
三級品
3.575
2.860
1.790
3.850
3.080
1.925
4.76
3.80
2.38
12Y-L1 一級品
二級品
三級品
2.795
2.235
1.400
3.010
2.405
1.505
3.72
2.97
1.86
12Z-P1 一級品
二級品
三級品
3.030
2.425
1.515
3.265
2.610
1.630
4.03
3.41
2.01
12Y-R1 一級品
二級品
三級品
3.485
3.005
1.740
3.755
3.215
1.875
4.64
3.92
2.31
12Y-R2 一級品
二級品
三級品
3.030
2.425
1.515
3.265
2.610
1.630
4.03
3.25
2.01
12Y-V1 一級品
二級品
三級品
3.645
2.920
1.820
3.925
3.145
1.960
4.85
3.88
2.42

・真空管製造業者がラジオ受信機製造業者に受信機製造用として販売する場合は表の製造業者販売価格から物品税額を差し引く。

・表の一級、二級、三級は、ラジオセットとは異なり、メーカ別ではなく、品質の等級である。
それぞれ電気機械統制会の放送受信機用真空管検査規定による各級の試験に合格し他ものに対し、指定の検査印章をつける。
二級品の価格は一級品の8割、三級品は一級品の半額となっている。等級印の無いものは三級品の半額とされた。

     
  真空管試験合格印章

 戦時中から戦後にかけて、一級の表示のある真空管は多い。ごくまれに二級品も見られるが、三級品の現物は今のところ確認していない。
残された二級品も相当に程度の低いものである。三級品が果たして実用に耐えたものか、疑問が残る。
戦後の混乱期には、白色で二級の表示をしたものもある。

 引渡しの際の条件等はキャビネットや部品と基本的に同じ。

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参考文献

現行公定価格総覧中央篇第二綴 機械・金属並製品、追録第27号加除済 第一法規出版 1943年9月

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