ラジオの公定価格(昭和19-23年)
Official Price of Radio (1944-48)


目次

解説 (加筆訂正)
ラジオ受信機統制額 (加筆訂正)
ラジオ受信機用キャビネットの統制額 
ラジオ受信機用部分品の統制額 
放送受信用真空管の統制額 
参考文献

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解説

 終戦後、戦時公債の乱発による財政悪化と物資不足などにより、物価は急騰し、激しいインフレとなった。
戦時中、物価を統制していた軍需省は解体され、新たに設置された物価庁がその役割を担っていた。
ラジオやラジオ部品についても配給制度は戦時中を同じように実施されていた。
ここでは省略したが、ラジオの修理代、審査料の統制額が定められているのが興味深い。

 戦後の生産状況と配給制度 

 物価の高騰は著しく、終戦から約1ヶ月経った1945年9月末には、ラジオの公定価格は約2倍に引き上げられた。
これでも資材や諸物価の値上がりには追いつけず、すぐに値上げとなった。
このためラジオの価格は終戦をはさんで約25倍、戦後だけ見ても、1946年末に対して1年後には3-4倍に高騰している。
特に1947年8月には、実勢価格を反映して公定価格が4月の約2倍に引き上げられたが、2千円を超える価格は大多数の消費者にとって高すぎ、公定価格で販売することが困難になり、11月には2千円をわずかに下回る水準まで引き下げれれるという混乱が生じた。(6)

 真空管の生産が間に合わないことから真空管の価格高騰は著しく、公定価格で戦中の40-60倍になっている。
実際には、闇市場での実勢価格はこの公定価格のさらに3-6倍になっていた(6)。
1946年にはメーカーに真空管が行き渡らない中で、保守用の真空管の配給はほとんど無い状態になり、既存の受信機の維持が困難に成った。
このため、GHQの裁定により受信機の生産を月6万台に制限し、超過した分の真空管を保守用にまわすことになった。
1947年度後半の真空管の生産増加により、ラジオセットの生産枠は、1947年度だけで撤廃された。

 戦後もラジオ、真空管の配給は続いた。配給は日本ラジオ受信機配給(株)が一手に購入して配給組合または商工組合を通じて小売店に配給されていたが、1946年10月の独禁法成立以降日本協同ラジオ(株)に改組され、11月に結成された中央配給委員会(委員はメーカ、販売業者、放送協会から成り、日本通信機械工業会が事務を担当した)が国民型受信機及び保守用真空管の割り当てを行った。
 しかし、きわめて複雑な配給機構は、生産、流通が不完全な状況でうまく機能せず、1947年秋頃からの真空管の生産増加により1948年2月に配給機構が解消され、自由取引となった。

 生産量が順調に増加したため、1948年10月8日にはラジオ受信機および一般ラジオ部品の価格統制が撤廃された。
真空管については引き続き統制価格が継続したが、1949年6月から統制額が撤廃された。
また、1949年8月16日には、GHQから指示された受信機および真空管の生産枠も撤廃された。

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ラジオ受信機統制額

昭和18年(1943)6月4日商工省告示第488号、昭和19(1944)年2月の軍需省告示第93号、同3月209号改正
物価庁告示第201号(1947.4.28)、508号(1947.8.28)、1000号(1947.11.14)による
価格は販売業者統制額を示す。指定なき機種はマグネチック・スピーカ使用

種別 使用真空管 1944.3 1945.9(5) 1946.12 1947.4 1947.8 1947.11 備考
国民型1号 V1-R1-P1-K2 81.80 164 600 1,094 2,016 1,894 レス
微電界級

シャープ国民型1号
国民型2号A 6D6 6C6 6Z-P1 12F --- --- 600 1,079 2,016 1,894 高1
微電界級

ヘルメス3K型
国民型2号B V1-R1-P1 12F --- --- 600 不明 不明 不明 高1
微電界級

シャープ国民2号(B型)
国民型2号C 6D6 6C6 42 12F --- --- --- 1,094 2,016 1,894 高1
微電界級

トム11型
国民型3号 V1-R1-P1-K2 --- 1,025.00 1,468 2,457 2,303 レス,ダイナミック
微電界級
国民型4号A 6D6 6C6 42 80 --- --- 1,025 1,834 2,728 2560 高一,ダイナミック
微電界級

ダイヤトーン46C型
国民型4号B 6D6 6C6 6Z-P1 12F --- --- 1,025 不明 不明 不明 高一,ダイナミック
微電界級

チェリーRA-2型
国民型5号 57-56-12A-12F 55.05 118 402 778 1,436 1,346 並四
弱電界級

フタバ国民型5号
国民型6号A 58-57-47B-12F 82.55 172 582 1,068 2,004 1,881 高1
微電界級

テレビアン13号
国民型6号B 58-57-3YP1-12F 82.55 --- --- 1,104 2,035 1,911 高1
微電界級


1. 製品価格には電源コードおよびプラグを含む。

2. 販売業者販売価格には包装荷造費を含み、買主店先渡し価格とする。

3. この表の統制額には、物品税を含まず。

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ラジオ受信機用キャビネットの統制額

昭和18年(1943)6月4日商工省告示第489号
物価庁告示第511号(1947.8.28)、 価格は販売業者統制額を示す。

 戦中期と異なり、キャビネットの統制額はラジオ部品の統制額の一部となった。

用途 1943.6 1947.8
国民型1号用 7.45 308.00
国民型2号用 --- 308.00
国民型3号用 --- 400.00
国民型4号用 --- 400.40
国民型5号用 6.05 277.20
国民型6号用 7.95 308.00

1. 販売業者販売価格には包装荷造費を含み、買主店先渡し価格とする。

2. 小売価格は売主店先価格とする。

3. この価格は物品税込価格とする。

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ラジオ受信機用部分品の統制額

物価庁告示第511号(1947.8.28)

 ラジオ部品についても戦中と同様に公定価格が定められていた。
膨大なものになるのですべて紹介することはしないが、項目は次のとおりである。

電源変圧器、低周波変圧器、低周波塞流線輪、中間周波変成器、ダイナミック高声器、マグネチック高声器、
可変蓄電器、可変空気蓄電器、角型紙蓄電器、筒型紙蓄電器、固定雲母蓄電器、半固定蓄電器
可変抵抗器、固定抵抗、高周波同調線輪、高周波塞流線輪、同調ダイヤル、マグネチック高声器用線輪、受話器(両耳型)
電源スイッチ、真空管受口、ヒューズ筒保持器、真空管用遮蔽缶、チップジャック、スプリング端子、ツマミ

 項目は戦中と特に変化はない。

戦中に存在した、特品、並品の違いは、トランス、スピーカ、コンデンサ、抵抗器について、商工省指定の検査機関の検査に合格し、検査合格印章または検査証紙を貼付したもの以外は統制額の半額とされた。

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放送受信用真空管の統制額

真空管については、戦中の一覧と比較して、167,1A6などの電池管および45,46,47などの旧型管が落とされ、国民型受信機およびスーパー用の6.3V管および、Gシリーズが追加されている。
また、6F7、6L7G、43など、数多く放出された品種が追加されている他、戦中の表には掲載されていなかった2A3が追加されている。
真空管の価格は高騰が著しいが、1947年末には、同年夏に対して5%程度値下がりしていることがわかる。
これは、真空管の生産が軌道に乗ってきたことで供給が回復したことによるものである。
1948年秋の改訂では、生産は順調に回復していたが、市場価格に合わせてか、大幅に統制額が値上げされた。
これらの数字は、文献(2)-(4)によったが、一部に誤植と思われるものを含んでいる。明らかにおかしい数値には?を付した。

昭和18年(1943)5月1日商工省告示第390号、昭和19(1944)年3月軍需省告示第181号改正
物価庁告示第201号(1947.4.28)、508号(1947.8.28)、1129号(1947.11.14)、1034号(1948.10.15)による

種別 型別 1944.3 1947.4 1947.8 1947.12 1948.10
UX-12A 一級品
二級品
1.88
1.50
82.10
65.70
137.13
109.70
KX-12F 一級品
二級品
1.68
1.33
71.15
45.40
118.99
95.04
UY-24B 一級品
二級品
3.08
2.46
195.95
156.75
327.15
261.73
UX-26B 一級品
二級品
1.89
1.50
85.80
68.65
143.31
114.65
UX-30 一級品
二級品
2.53
2.02
77.15
61.70
128.86
103.08
UX-32 一級品
二級品
4.72
3.77
220.80
176.65
278.19
222.56
UY-33 一級品
二級品
3.66
2.93
169.55
135.65
278.20
222.55
UZ-42 一級品
二級品
---- 140.70
233.10
226.10
180.90
284.85
227.87
UY-43 一級品
二級品
---- 247.75
198.20
312.18
249.73
UY-47B 一級品
二級品
3.36
2.69
154.60
123.70
194.95
155.94
UY-56A 一級品
二級品
3.05
2.43
139.35
111.50
175.60
140.47
UZ-57A 一級品
二級品
4.26
3.41
195.95
156.75
316.97
253.58
UZ-58A 一級品
二級品
4.42
3.53
206.75
165.40
334.51
267.60
UZ-75 一級品
二級品
---- 29645
237.16
479.67
383.72
UY-76 一級品
二級品
---- 142.30
113.85
230.24
184.19
KX-80 一級品
二級品
3.35
2.69
99.25
172.45
167.30
133.85
270.62
216.46
UX-2A3 一級品
二級品
---- 443.20
282.75
717.04
573.61
UZ-2A5 一級品
二級品
5.35
4.27
242.65
194.10
392.54
314.01
UZ-2A6 一級品
二級品
6.40
5.12
285.35
228.30
365.81
292.61
Ut-2A7 一級品
二級品
7.99
6.39
363.15
290.50
457.53
366.00
Ut-2B7 一級品
二級品
8.07
6.46
369.40
295.50
465.48
372.39
KX-5Z3 一級品
二級品
6.72
5.37
248.50
311.60
504.12
403.89
Ut-6A7 一級品
二級品
---- 370.80
296.65
599.89
479.89
Ut-6B7 一級品
二級品
---- 377.20
301.75
610.32
488.25
UZ-6C6 一級品
二級品
---- 113.50
197.25
191.30
153.05
309.70
247.65
UZ-6D6 一級品
二級品
---- 116.70
202.10
196.05
156.85
317.19
253.73
Ut-6F7 一級品
二級品
---- 308.80
247.05
389.03
311.20
Ut-6L7G 一級品
二級品
---- 384.30
385.50
607.11
485.68
6Z-DH3 一級品
二級品
---- 296.45
237.15
479.67
383.72
3Y-P1 一級品
二級品
---- 241.62
193.31
6Z-P1 一級品
二級品
---- 123.50
211.90
205.55
164.45
258.84
207.17
12X-K1 一級品
二級品
3.66
2.93
162.80
130.25
24Z-K2 一級品
二級品
5.03
4.03
128.70
223.65
212.45
169.95
243.74
?274.98
KZ-25Z5 一級品
二級品
---- 247.75
198.20
312.18
249.73
12Y-L1 一級品
二級品
3.94
3.14
113.10
184.90
175.65
140.50
12Z-P1 一級品
二級品
4.26
3.41
109.70
190.55
181.00
144.80
228.05
182.45
12Y-R1 一級品
二級品
4.90
3.92
126.50
220.30
209.30
167.45
338.56
270.84
12Y-V1 一級品
二級品
5.13
4.11
130.10
226.05
214.75
171.80
347.48
277.97
12G-K10 一級品
二級品
---- 157.35
125.90
254.57
203.65
12G-K4 一級品
二級品
---- 219.55
175.65
328.82
263.03
12G-P7 一級品
二級品
---- 220.65
176.50
383.31
306.64
12G-DH4 一級品
二級品
---- 381.85
305.50
617.82
494.21
12G-C4 一級品
二級品
---- 477.70
382.15
772.83
618.26
B-37 一級品
二級品
---- 64.85
51.90
108.33
86.67
B-49 一級品
二級品
---- 72.40
57.90
B-300 一級品
二級品
---- 72.40
57.90
120.91
96.71

・真空管製造業者がラジオ受信機製造業者に受信機製造用として販売する場合は表の製造業者販売価格から物品税額を差し引く。

・表の一級、二級、は、品質の等級である。
それぞれ電気機械統制会の放送受信機用真空管検査規定による各級の試験に合格し他ものに対し、指定の検査印章をつける。
二級品の価格は一級品の8割、となっている。
戦中の規定では三級品まで存在したが、戦後の表には無い。製品全体の品質が著しく低下したため、無意味となったのだろう。

     
  真空管試験合格印章

 戦時中から戦後にかけて、一級の表示のある真空管は多い。ごくまれに二級品も見られる。
戦後の混乱期には、白色で二級の表示をしたものもある。

 引渡しの際の条件等はキャビネットや部品と基本的に同じ。

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参考文献

(1)東京公定価格総覧中央篇第二綴 機械・金属並製品 第一法規出版 1943年5月(加除式)
(2)電波科学復刊第3号 1947.2 日本放送出版協会
(3)ラジオ年鑑 昭和23年版 1948.12.30 日本放送協会編 日本放送出版協会
(4)ラジオ年鑑 昭和24年版 1949.12.15 日本放送協会編 日本放送出版協会
(5)放送 1946.1(再刊第1号) 日本放送協会
(6)中島裕喜 ラジオ産業における生産復興の展開 2008.3 経営論集 71号

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