戦時中の中級受信機 (1938-45)


 普及型の並4受信機では電波の弱い地域では実用にならなかった。ラジオの生産、統制され、配給は限られていたが、戦時下、ニュースや情報の伝達にラジオは重要な意味を持っていた。このため、電波の弱い地域では高周波増幅の付いた4球または5球再生式受信機が使われた。代表的なものは局型123号受信機だが、ほかにも多くのセットが生産された。58-57-47B-12Fの4球でダイナミックまたはマグネチック・スピーカを駆動するものおよび低周波段を56-12Aの3極管2段としてマグネチックを駆動するものが規格品として定められていた。5極管出力で低周波増幅を2段にして、見かけ上の感度を稼いだセットもあったが、大入力時に飽和しやすい問題があった。

 ここでは第2次大戦中の受信機のうち、放送局型受信機以外の、いわゆる「国策型受信機」と呼ばれるセットのうち、中級クラスに属する高一受信機および低価格の高二受信機を紹介する。
並四球以下の受信機は「戦時中の普及型受信機」を参照のこと。

太字は最新の更新を示す


高一付受信機

一級品メーカ

キャラバン(Caravan) MD-8号  4球ダイナミック受信機          原口無線電機(株)  1940年頃 公定価格\73.70 

ナナオラ(Nanaola) N-14型    4球ダイナミック受信機         七欧無線電機(株)  1940年 \100.00

ナショナル(National) 南進四十五号型 4球受信機            松下無線(株)     1938年頃 
ナショナル(National) R5-M型      5球受信機            松下無線(株)     1939年頃 公定価格\51.00 
ナショナル(National) R4-D型      4球ダイナミック受信機     松下無線(株)     1940年  公定価格\73.70 
ナショナル(National) 5M-1型      5球受信機            松下無線(株)     1939年 
ナショナル(National) 5D-1型      5球ダイナミック受信機     松下無線(株)     1940年 

アリア(Aria) J-55型 5球受信機                      ミタカ電機(株)    1940年頃
アリア(Aria) J-D5型       4球ダイナミック受信機       ミタカ電機(株)    1940年頃 (NEW)

シャープ(Sharp) 標準20号受信機                      早川金属工業(株)  1940年頃 
シャープ(Sharp) D-40型 4球ダイナミック受信機             早川電機工業(株)  1942年頃 公\99.40

コロムビア(Columbia) CR-120型 4球ダイナミック受信機       (株)日本蓄音機商会 1939年 \78.00  (NEW)
コロムビア(Columbia) 41A-6型  セミトランスレス4球受信機    (株)日本蓄音機商会 1941年 
コロムビア(Columbia) CR-123型 4球ダイナミック受信機      (株)日本蓄音機商会 1943年 公\99.70 

ヘルメス(Hermes) 123型      トランスレス4球受信機      大阪無線(株)      1941年頃  

二級品メーカ

ルモンド受信機   4球受信機                  (合)信井商会    1940年頃


高二受信機

木製シャーシ使用5球受信機       製作者不明      1943年頃  


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高一付受信機(一級品メーカ)


キャラバン MD-8号 4球ダイナミック受信機 原口無線電機(株) 公定価格\73.70

  

  裏蓋の規格品ラベル

 中堅メーカ、原口無線電機の4球ダイナミックセット。58-57-47B-12Fの配列で、6.5インチ・フィールド型ダイナミックを駆動する。
商工省規格品であるため、ラジオ工業組合のステッカが裏蓋に貼られている。

本機は、使用感が少なく、コンディションが良い。ただ、出力トランスが交換されている。

(所蔵No.11675)

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ナナオラ N-14型 4球ダイナミック受信機 七欧無線電機(株) 1940年 \100.00

   

 関東系の大手メーカ、ナナオラの高一ダイナミック受信機。
58-57-47B-12F の構成で6.5インチフィールド型ダイナミック(FLOWERVOX D-65)を駆動する。
キャビネットは重厚で上質なつくりである。当時としてはかなり高級な受信機である。
ダイヤルには皇紀2600年記念を示すと思われる「2600」の文字が印刷されている。

(所蔵No.11341)

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ナショナル(National) 南進四十五号型 4球受信機 松下無線(株) 1938年頃

  

 

 松下の高一受信機。58-57-47B-12F の4球でマグネチックを駆動する。
ダイヤルには「国民3号型」の表示があり、シャーシは国民3号型と共通である。
型番の「南進」だが、当時南方(現在の東南アジア方面)の資源地域を確保しようとする方針を南進政策と呼んだ。
これに対して中国大陸に進出する方針を「北進」と呼んだ。
政治的意図があるとは思われず、威勢のいい流行語を付けたものと思われる。

本機は、ダイヤルの針が失われている。

(所蔵No.11223)

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ナショナル R5-M型 5球受信機 松下無線(株) 1939年頃 公定価格\51.00

  

 松下の高一5球受信機。58-57-56-12A-12F の構成で、自社製鉄フレームマグネチックを駆動する。
このタイプの5球高一受信機は、商工省の規格品となっている形式である。
マグネチックスピーカを使用した受信機としては高級なものである。

本機は、油汚れと塗装の劣化がひどい。

(所蔵No.11250)

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ナショナル R4-D型 4球ダイナミック受信機 松下無線(株) 1940年 公定価格\73.70

  

 松下の高一ダイナミック受信機。58-57-47B-12F の標準的な回路で、自社製小型フィールド型ダイナミック、D-50型を駆動する。
このタイプの4球ダイナミックは、商工省の規格品となっている形式である。
マグネチックスピーカを使用した並四受信機と変わらないサイズのキャビネットを使用し、普及型のセットと共通部品も多い。
低コストのダイナミックセットである。
この上位機種として、低周波段に56を追加して5球としたR-5Dが存在した。

本機は、ツマミが1個失われている以外はほぼオリジナルの状態を維持している。

(所蔵No.11289)

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ナショナル(National) 5M-1型 5球受信機 松下無線(株) 1939年 

  

 松下の高一5球受信機。58-57-26B-12A-12F の構成で、自社製鉄フレームマグネチックを駆動する。
58-57-47B-12F の4級に対して、低周波段に26B-12Aの3極管2本を使うことでコストダウンしたもの。
右のツマミはアンテナ切替スイッチである。左から分離−標準-感度 と表示されている。

(所蔵No.11798)

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ナショナル 5D-1型 5球ダイナミック受信機 松下無線(株) 1940年

  

  

 松下の高一低二の5球受信機。58-57-56-47B-12F の配列で、自社製6.5インチフィールド型ダイナミック・スピーカD-65型を駆動する。
並四受信機が一般的だった時代にあってはかなり高級な受信機である。

 本機は元のダンボールに入った、ほぼオリジナルの状態で発見された。
ただし、未使用新品ではなく、使わなくなったものを取っておいた箱に入れてしまいこんだものと思われる。
大切に扱われたものであることがわかる。

掲載誌:無線と実験 1940.2

(所蔵No.11363)

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アリア J-55型 5球受信機 ミタカ電機(株) 1940年頃

  

 

 当時の大手メーカー、ミタカ電機の高一受信機。規格品の高一は58-57-56-12A-12Fの5球式だが、このセットは56のかわりに旧式な26Bを使用することでコストを抑えている。
低周波を3極管2段とすることで見かけ上の感度を稼ぎ、高一4球の感度階級が微電界級なのに対してスーパーと同じ極微電界級となっている。
トランスの小型化など、資材の節約は見られるが、鉄製フレームのスピーカー、小型化されているがコイルケースを使っているなど、まだまだ贅沢なつくりである。
「放送聴取用受信機」のものものしい銘板がこの時代の雰囲気を感じさせる。

(所蔵No.11532)

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アリア(Aria) J-D5型 4球受信機 ミタカ電機(株)  1940年頃

  

 

TUBES: 58 57 47B (3Y-P1) 12F, 6.5" Electro-dynamic Speaker (Aria), BC: 550-1500kc

関東系の大手メーカー、ミタカ電機のダイナミックセット。スーパー受信機を思わせる小型のケースに入った高周波コイルが使われている。
通常の構成の高周波1段4球受信機だが、この形式のセットの感度階級が通常、微電界級であるのに対して、この機種は高周波2段やスーパーと同じ極微電界級となっている。
低周波増幅のゲインで感度を稼いだものではなく、高周波コイルのQで感度を上げたものと思われる。

本機は、福島県郡山市で使われていた。

(所蔵No.11A005)

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シャープ 標準20号受信機   早川金属工業(株) 1940年頃

  

TUBES: 58-57-47B-12F,

 シャープの高一受信機。47Bでマグネチック・スピーカを駆動する標準的なセット。

本機はスピーカが失われている。キャビネットは虫食いが見られ、ツキ板のはがれなど、傷みがひどい。
ツマミは右下の2つがオリジナルである。

(所蔵No.11369)

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シャープ D-40型 4球受信機 早川電機工業(株) 1942年頃 公定価格\99.40

  

TUBES: 58-57-47B-12F, Electro-dynamic Speaker (Aria), BC: 550-1500kc

 シャープの高一ダイナミックセット。58-57-47B-12F の規格品。
大型でシャーシのつくりは良い。一般的な受信機の中では高級なモデルである。

本機のスピーカはオリジナルではない。キャビネットは劣化がひどく、保存状態は良くない。

(所蔵No.11480)

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コロムビア(Columbia) CR-120型 4球受信機  (株)日本蓄音機商会 1939年 \78.00

  

TUBES: 58-57-47B-12F, Columbia 7" Electro-dynamic Speaker, BC: 550-1500kc

コロムビアの中級ダイナミックセット。7インチの大型スピーカを47Bで駆動する。
デザインは簡素になっているが、まだそれほど質は落ちていない。

本来スピーカは、キャビネット内側に斜めに設置された木製フレームで支えるコロムビア独特の方法で固定されるが、オリジナルよりも小さいユニットに交換されているため、異なった固定方法になっている。
ツマミは失われていたため、同型のレプリカを取り付けた。

(所蔵No.11989)

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コロムビア(Columbia) 41A-6型 セミトランスレス4球受信機 (株)日本蓄音機商会 1941年

    

TUBES: 12YR1-12YV1-12ZP1-24ZK2, Electro-dynamic Speaker (Aria), BC: 550-1500kc

 局型受信機用の真空管を使ったダイナミックセット。5インチフィールド型ダイナミックを使用。
12YR1-12YV1-12ZP1-24ZK2 のレイアウトは局型123号と同じだが、24ZK2の片側をフィールドの電源に使うため、123号のような倍電圧整流ではなく、Bを昇圧するための小型の単巻トランスを持つセミトランスレス式である。
高級受信機らしい横行ダイヤルだが、ダイヤルプーリの中心にツマミが付いているため減速機構がなく、使いにくい。

本機は、ツマミが失われていたため、同時代のコロムビア製ツマミのレプリカを取り付けた。

(所蔵No.11403)

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コロムビア(Columbia) CR-123型 4球受信機  (株)日本蓄音機商会 1943年 公\99.70

  

 

 太平洋戦争が激化した頃の中級受信機。1940年発売のCR-122型の後継機。
58-57-47B-12F の4球式。フィールド型ダイナミックを駆動する。
高級感を演出する横行ダイヤルは減速機構がなく、実用的にはまったく意味がない。
従来アルミであった銘板は紙製になっている。

本機はスピーカおよび中央の1個を除くツマミがオリジナルでない。

(所蔵No.11437)

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ヘルメス(Hermes) 123型 トランスレス4球受信機 大阪無線(株) 1941年頃 

  

  

 TUBES: 12Y-V1 12Y-R1 12Z-P1 24Z-K2 B-37, Magnetic Speaker

 ヘルメス高級受信機で知られる大阪無線が発売した特異な高1セット。
型番も「123型」だが、回路も放送局型123号受信機とほぼ同じものである。
回路図こそ局型受信機とほぼ同じだが、シャーシのレイアウトや使用部品、キャビネットのデザインは局型とは大きく異なるもので、メーカー独自の設計によるもののようである。
放送局型受信機以外で、トランスレスを採用したセットは非常に珍しい。

本機は、6D6 6C6 6ZP1 12F のトランス式高1受信機に改造されている。
また、ツマミはオリジナルではない。

(所蔵No.11968)

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高一付受信機(二級品メーカ)


ルモンド受信機 4球受信機 (合)信井商会 1940年頃

  

  裏蓋に貼ってある規格品証紙

 中小メーカの4球高一受信機。58-57-47B-12Fの構成で紙フレーム・マグネチックを駆動する。
高一受信機としてはかなり安価なセットと思われる。この時代にスパイダーコイルを使用しているのは珍しい。

(所蔵No.11309)

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高二受信機


木製シャーシ使用5球受信機  (5球) 製作者不明 1943年頃

  

 木製シャーシに組み立てられた高二受信機。58-57-57-3YP1-12F の構成で、紙フレーム・マグネチック(オリオン78号、放21179)を駆動する。
大型のキャビネットや横行ダイヤルなど、高級品らしいところもあるが、貧弱なトランス、中古部品の再利用も見られ、もののない時代のラジオらしいセットである。
製作年代や製作者を示す資料はまったくないが、アマチュアの手作りか、ラジオ商が組み立てたものと思われる。

本機はツマミが1個失われている。

(所蔵No.11298)

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